ニューハウス「自然を感じて暮らす」で特集された住宅。建物の周りにある4つ庭を楽しみながら暮らす。離れにある茶室とバスルームで、リゾートにいるような生活を満喫している。しかもパッシブデザイン住宅です。
しつらいで温熱環境をコントロールする箱
郊外に比較的広めの敷地を求めた30代半ばの若い夫婦にとって、最初から完成された住宅である必要はなく、建築の基本性能をしっかり確保しながら家族の成長とともに設えを変えていく住宅として計画を進める事となった。
そのようなことから浴室と和室(茶室)を離れにした思い切ったプランも、今を楽しむと云う視点で賛成していただいた。
また、階段室のガラスの箱を環境をコントロールする装置とする事も同意して頂いた。ガラスの箱とした事で、この部分のヒートショックについても配慮する必要があった。そこで、後にホームエレベーターの設置や、離れと主屋の連結も可能なように計画している。そして竣工時には設置を見合わせていた空気循環システムも生活しながら設置を検討していく。
これらの備えによって、地下を親世帯とする2世帯して改造することも可能な成長する家となっている。
コンセプト
ひな壇状の敷地では、地下(道路レベル)に駐車場のボックスをつくり、段の上に家屋を配する事が多い。
しかし、老朽化した擁壁を取り壊した後に、新たな擁壁を造り、再度、土を埋め戻すよりは敷地をオープンカットして生まれる地形を利用する方が合理的であり、また変化のある外部空間と建築との関係が生まれると考えた。
そこで、二つの正方形を敷地の程よい位置に配置するとその余白の空間は様々なレベルと形状を持つことになる。その空間に「雑木林の庭」『石庭(枯山水)」「外室」「車庫+ワークスペース」という、それぞれに相応しい外部空間を形成することになる。
住宅の主屋は、正方形の単純なプランが、三層に重なる構成で、この直立方体の南面する2面から飛び出す形でガラスの箱を設けている。
このガラスの箱には、外付け電動スクリーン、金属+樹脂のペアガラスサッシのオーニング、そして太鼓張りの障子が、動く装置として用意されている。
家人は自然の様子、気配を察知して、この動く装置の設えを変えていくことで、昼夜、四季を通じて快適な暮らしを獲得されている。
また、このガラスの箱は階段室でもあり、住宅の上下の移動とともに様々になレベルにある庭を楽しむことになる。
室内からは、なるべく隣家と視線が交差する事のないように塀や開口部を配し、開放的でありながらプライバシーを確保した空間を造り出し、生活の背景に常に外部空間としての庭が見えるようになっている。
温熱環境図 夏季
外付け電動スクリーンで効果的に遮熱。夜間はコンクリート造の地階に外気で蓄冷し日中はファン(将来設置)によって、その冷気を循環させている。
温熱環境図 冬季
蓄熱暖房機によってコンクリートの地下躯体を暖める。自然対流で上階に集まった暖気を、ファン(将来設置)で地階に送り込む事で、家全体が均質な室温になる。
パッシブシミュレーションソフトによる結果
自然室温は一定ではありませんが夏の室温は涼しくすごしやすい状態です。冬の朝に10度を下回る時間帯があります。この時間帯に補助暖房を必要とします。
DATA
パッシブデザイン定量評価 評価基準など詳しくはコチラ | ★★ |
建物の種類 | 一戸建て |
構造 | 地下:RC外断熱 地上:木造 |
敷地面積 | 157.1m2 |
延床面積 | 185.6m2 |
DATA | 外室(中庭/4つの庭/アトリウム)、ホームシアター、地階 外断熱 ニューハウス9月号(7/20発行)、東京生活NO.11(2006年春) |
設計・デザインのポイント | ・アトリウムは外付け電動ロールスクリーン、オーニング、障子が組み込まれ、光と温熱の制御装置として機能する。 ・アトリウムには階段が配され、住宅をスパイラル状に移動しながら庭とのシークエンスを楽しむ事ができる。 ・RC外断熱(地下)部分に躯体蓄熱する事で室温を安定させている。 ・高気密・高断熱(次世代基準相当)で設計されている。 |
クライアントの声 全文はコチラ | 滝川さんは、真摯に建築のことを考えていらっしゃる方で、お会いしてすぐにこの先生ならば大丈夫だろうと感じることが出来た。 テーマは「スローライフを楽しむ」ということであったが、風呂場をテラスで隔てられた離れに設置することにより、入浴行為を日常生活から非日常の特別イベントに押し上げ、生活に張りを持つことができた。 |